あけおめ

地元に帰ってきて3年がたった。
カウンセリングを1年半受けたり、家庭内器物損壊を繰り返して
なんとか人間らしい暮らしに戻った。
人にはメンテナンスが終わったって言ってる。


心の堤防が決壊したとき救いになったのは近所の野良猫だった。
実家から1ブロック離れた路地に住んでるハチワレのオス。
元飼い猫らしく人懐っこく、膝に載るのが好きだった。
僕が立ってると太ももの辺りを引っ掻いて
座れよって催促するような猫だった。
狭い路地で僕が地べたにあぐらをかくと
すごく異様な景色だったと思うが
脚のくぼみに陣取ってすぐに寝息を立てだした。


あるときなんだか苦しそうな咳をしていると思ったら
あっという間に別れが来た。
遊んでもらおうと思って行ったら
餌をやってるおばあさんが死んだって教えてくれた。
段ボールに納められ、毛布と花が添えられていた。
きちんと火葬をすると言っていた。
ものの3ヶ月程度の付き合いで去っていった。

僕は何もしなかったなーと思って
近所にいる野良猫を捕まえて避妊手術を受けさせた。
やれることがあるならやっといた方が後悔が少なそうだと思った。